最近の診察室で

 今、まさに秋たけなわで、「スポーツ」の秋、「食欲」の秋、「芸術」の秋など、どんな形容も似合うこの頃の気候
ですが、皆さまはどんな秋をお過ごしですか。
今回は、ある受診者の方との最近の診察室でのやり取りを通じて、私たち、医療従事者が身につけておかなければ
ならないコーチングスキルについてお話しようと思います。

 『そもそも、コーチングスキルとは何?』からお話します。
スポーツ選手に付いているコーチなら、体を使ってお手本を示し、それによって記録の向上を目指すことも可能です。
一方、私たちは、ことばによるコミュニケーションだけを頼りに、対象者の行動が好ましい方向に変わっていくことを
サポートしています。これが、私たちのコーチングです。このコミュニケーションでは、良く聞いて、その現状を認め
てやり、そして、今後の改善に向けた答を自ら引き出せる適切な質問を投げかける、この3つのスキルが肝要と習いま
した。

 診察室での実例をお話しましょう。その受診者の方は診察室に入って来られて、先ず、『腰痛』を訴えられました。
そして、そのため、最近は『好きなスポーツ』もお休みしていると、残念がって言われました。さらに、『持病の腰痛も
好きなスポーツで悪化するのに気付いているのだが、腰に頼らざるを得ない。』と。私はお話を聞きながら、カルテとこ
の日の検査記録に目を向けました。すると、その方は長年の喫煙者で、肺機能検査から息切れを主訴とする慢性閉塞性肺
疾患(COPD、当ブログ2008年7月29日付をご参照ください)の入り口にあることが分かりました。
 
 ここで、いつものように喫煙者に対して行う一通りの質問を投げかけました。『禁煙のお積もりは?』と。答えは、『ノー』
でした。瞬間、私には『好きなスポーツ』とその方の『プレースタイル』が頭に浮かびました。そこで、次の質問を致し
ました。『あなたのお好きなスポーツはテニスで、しかも、長く続くストローク戦は息切れのため苦手で、サーブアンド
ボレーに頼ってはいません?』と。受診者の方の顔色の変化から、的中したことは分かりました。次に、『持病の腰痛の
原因は、瞬間的な腰への負担の多いプレースタイルにあり、これを変えるべきで、そのためには煙草をやめて、息切れを
防ぐようにすれば、まだまだ、スポーツを楽しめると思いますよ』とお話しました。そして、最後の質問、『禁煙します?』。
お答えは、『イエス』でした。
 
 今回、診察室でのコーチングの実例を示しましたが、皆さまの実生活でもコーチング法は役立つと思います。参考にな
れば幸いです。

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